食用油シリーズ

第三回  油と健康



私たちの体にとって油(食用油)は、細胞膜やホルモンの生成などになくてはならない重要な栄養素です。しかし、摂り過ぎや摂り方のアンバランスは私達の健康に悪い影響を与えてしまいます。また、植物油というだけで体に良いと言われてきましたが、抽出方法や調理の仕方によっても健康に悪影響を与えます。特に最近ではトランス脂肪酸、そして、多くの植物油に含まれるリノール酸の過剰摂取が問題になってきています。


さて、このトランス脂肪酸とはどんなものなのでしょうか?

植物性マーガリン、植物性ショートニング等の主な原料は言うまでもなく植物性油脂です。植物性油は一般に常温では液体ですが、水素添加という方法で固体に変えています。この過程でトランス脂肪酸が大量に発生してしまうのです。水素添加とは120度から210度の高温、高圧の中で水素ガスを反応させる方法で行います。このとき、ニッケルや銅を触媒として使うため、製品の中に金属触媒のカスが残ってしまう恐れもあります。マーガリンを製造する過程で部分水素添加を行うと、片方の水素が反対の方向に移動「トランス」します。こうなると、飽和脂肪酸とどことなく似た、できそこないの飽和脂肪酸のような、いびつな形になります。これが、「トランス脂肪酸」です。マーガリンやショートニングなど自然界には存在しない不自然な油はバターと違いカビも生えず、虫やネズミ、ゴキブリさえも寄り付きません。その構造がプラスチックに似ていることから「食べるプラスチック」、「異変脂肪」、「狂った脂肪」などと呼ばれています。

ショートニングはさくさくとした歯ごたえを簡単に出せるため、パンやスナック菓子、揚げ物、クッキーまたクラッカーなどの加工食品に幅広く使われています。その他、ケーキ、チョコレート、ドレッシング、マヨネーズ、アイスクリーム、コーヒーフレッシュ、カップラーメン、ポテトチップスなど、トランス脂肪酸はあらゆる加工食品に含まれている可能性があります。また、現代の多くの食用油では日持ちを良くするために、化学的な技術を使い強引に水素をくっつけています。

自然界に存在しない不自然な構造をしたトランス型の脂肪酸は、体内に入るとなかなか代謝できず、そのまま内臓脂肪として蓄積されてしまい肥満の原因になるといわれています。また、肝臓にダメージを与え、体内コレステロールのバランスを崩して心臓病や糖尿病のリスクを高めたり、細胞膜の構造や働きを不安定にし、体内で大量の活性酸素を作りだして老化やガンの原因になるといわれています。トランス脂肪酸が脳に及ぼす障害として認知症などもあげられています。

不自然な油「トランス脂肪酸」はEU諸国やアメリカなどで規制されています。近年日本でも規制の動きがでています。スイスでは2008年から規制され、100グラム当たり2グラム以上のトランス脂肪酸を含んだ油脂の国内流通が禁止されています。

脂質は人間にとって炭水化物(糖質)に次ぐ重要なエネルギー源です。体内に糖質が少なくなると、脂質からエネルギーを補います。脂質は糖質の約二倍のエネルギーを供給する効率の高い燃料源です。また、細胞膜の生体膜を形成したり、体内で太陽の光を利用してビタミンDを合成したり、脂溶性のビタミンA, D, E, Kの吸収を助けたり、体温を保つなどの働きをします。このようにとても重要な栄養素ですが、現在の食生活ではリノール酸(オメガ6)の摂り過ぎが問題になっています。コーン油、大豆油、ひまわり油、紅花油、綿実油など市販されている植物油のほとんどがリノール酸だからです。

リノール酸(オメガ6)の摂り過ぎは、体内のホルモンのバランスを崩し、免疫の乱れや高血圧、アトピー性皮膚炎や花粉症、喘息などのアレルギー疾患との関連があると言われています。その他、肝臓の慢性的トラブル、関節炎に似た諸症状、心臓や循環器系の悪化症状、脳の細かい血管の破損、腕・脚の感覚の不能とちくちく痛みなどの症状との関連性が最近ヨーロッパの医学界で知られています。リノール酸(オメガ6)とαリノレン酸(オメガ3)の理想バランスは、1~4対1が良いといわれていますが、ほとんどの現代人のオメガ6とオメガ3の食事バランスが10対1、あるいは50対1ととんでもない比率になっており、さまざまな現代病を引き起こす大きな原因だと言われています。

αリノレン酸(オメガ3)には血液を固まりにくくする、血管を拡張し血圧を下げる、炎症を抑えるといった働きがあり、また脳の神経細胞が特にオメガ3を多く必要とすることが知られています。オメガ3を十分に摂ると脳を落ち着かせ気分を高め集中力を高めます。また不足すると攻撃的・注意欠陥障害・アルツハイマーや記憶の障害が起こりやすくなります。このようなことから、日本の厚生労働省も日本人の食事摂取基準についての中で、亜麻仁油(フラックスオイル)、しそ油(エゴマ油)のようなオメガ3系オイル(n-3系脂肪酸)を増やすべき栄養素として推薦しています。

さて最後にオレイン酸(オメガ9)です。オリーブ油には、オレイン酸が70~80%も含まれています。オリーブ油を日常的に利用している地中海沿岸の人々が、かなり多くの脂肪を取っているにもかかわらず、動脈硬化などの心疾患が少ないことで注目されるようになりました。オレイン酸の多い調理油は過熱しても酸化しにくい上に、オメガ3の働きを邪魔しないことが知られています。
良い油を選ぶには、コールドプレス、無農薬で化学肥料を使っていないオーガニックのもの、栽培した農園で搾油、瓶詰めされたものが良いでしょう。

(参考資料:「病気がイヤなら「油」を変えなさい!」(山田豊文著)、インターネット他)

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食用油シリーズ


第二回 食用油の種類 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

昨今よく飽和脂肪酸とか不飽和脂肪酸という言葉を耳にします。さて、これらの脂肪酸とはいったいどんなものなのでしょうか。

脂質の成分、脂肪酸にはいろいろな種類があります。その化学的構造、炭素と炭素の結びつきに「二重結合」と呼ばれる分子構造がないものを「飽和脂肪酸」、あるものを「不飽和脂肪酸」と呼んでいます。また不飽和脂肪酸は、「二重結合」が一つのものを「単価(又は一価)不飽和脂肪酸(オメガ9)」、二つ以上のものを「多価不飽和脂肪酸」と呼び、多価不飽和脂肪酸はさらに、「二重結合」の位置によって「n-6系多価脂肪酸(オメガ6)」と「n-3系多価脂肪酸(オメガ3)」に分類されます。

飽和脂肪酸


乳脂肪(バター)、豚の脂身(ラード)や牛の脂身(ヘッド)、脂身の多いばら肉や鶏皮などの動物性脂質や、ショートニングやマーガリン、そしてココナッツ油などの熱帯植物の油脂に多く含まれています。エネルギー源になったり、身体を作る大切な脂肪酸です。「二重結合」でないので化学的に安定しており、溶ける温度が高く常温では固体の状態です。そのため体の中で固まりやすく、血液の粘度を高めて血の流れを悪くし、血液を通じて細胞などに運ばれる酸素や栄養素が体に行き渡るのをさまたげます。また中性脂肪やコレステロールを増やす働きがあるので、動脈硬化の原因になります。ですから、飽和脂肪酸を摂りすぎると肥満や糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病につながり、心筋梗塞、脳梗塞などが起こりやすくなります。しかし逆に不足すると、血管がもろくなって脳出血などが起こりやすくなってしまいます。アメリカ心臓協会は、心臓病に対し飽和脂肪酸を摂り過ぎない健康な食事として、①肉は皮が取り除かれて脂肪の少ないものを選ぶ、②低脂肪の乳製品を選ぶ、③魚はn-3系多価脂肪酸が多く、心臓疾患のリスクを減らすので少なくとも週二回は食べる、④トランス脂肪酸(次回説明)が多い固形マーガリン、そして、フライドポテトなどの揚げ物をなるべく食べないようにする等の提案をしています。しかし、動物性脂肪を含む肉類を悪いものとして全く摂らないでいると、たんぱく質や鉄分、ビタミンの不足を招く恐れがあります。飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のバランスを考えた食事の仕方が必要です。

不飽和脂肪酸


炭素と炭素の結びつきに「二重結合」のある不飽和脂肪酸は化学的に不安定で、低い温度でも溶け、多くのものは常温で液体の状態です。主に植物油や魚の油に多く含まれています。

A)単価 (一価)不飽和脂肪酸 オメガ9 
飽和脂肪酸と同じように人間の体内で合成することができます。主な成分はオレイン酸で、オリーブ油、菜種油、品質改良でオレイン酸を多くしたひまわり油、ピーナッツ油、米ぬか油などの植物油に多く含まれますが、ヘッド(牛脂)やラード(豚脂)などの動物性の脂肪にも含まれています。オレイン酸は、酸化されにくいことから、発ガンの元とされる過酸化脂質を体内で作りにくいという特徴があります。加えて善玉コレステロールを減らすことなく(*オメガ6参照)、動脈硬化の原因になる悪玉コレステロールを減らすという働きもあります。酸化に強いので一般に加熱調理に適しています。

B)多価不飽和脂肪酸
体内で合成することができない必須脂肪酸ですから、食べ物から摂らなければなりません。
「多価不飽和脂肪酸」は酸化し易い性質をもつので、高温での加熱はしない、長時間空気にさらさない、光が当たらず低温な場所に保存する、そして新鮮なうちに食することが大切です。

B-1)オメガ6 「n-6系多価脂肪酸」
オメガ6の代表的脂肪酸はリノール酸です。コーン油、ひまわり油、紅花油(Distelöl)、大豆油、ゴマ油、くるみ油、アーモンド油など植物性油に多く含まれています。リノール酸は悪玉コレステロールLDL値を低くするとしてもてはやされていましたが、その後、血管などに蓄積されたコレステロールを回収する働きのある善玉コレステロールHDL値も同時に低くしてしまうことがわかり、問題にされています (*オメガ9参照)。また、体内でアラキドン酸になり、アレルギー症状を強めたり、体内ホルモンのバランスを崩して免疫の乱れや高血圧の原因になる恐れがあるので、摂り過ぎに注意しなければなりません。しかし、不足すると、感染しやすくなる、成長の遅れ、皮膚そして肝臓や腎臓のトラブルなどの原因になります。

B-2)オメガ3 「n-3系多価脂肪酸」
オメガ3の代表的な脂肪酸はα・リノレン酸です。体内に摂取されると「二重結合」を五つもつEPA(エイコサペンタエン酸)や、「二重結合」を六つもつDHA(ドコサヘキサエン酸)に変換されます。α・リノレン酸は亜麻仁油(Leinöl)などの植物性油脂に、そして、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸) は青魚に多く含まれています。イワシ(鰯:
Sardine) 、サンマ(Makrelenhecht)、さば(鯖:Makrele)、にしん(鯡:Hering)、さけ(鮭:Lachs)、クリルオイル(Krill Oil=南極オキアミ)などです。血液をサラサラにする、虚血性心疾患や高血圧、動脈硬化などを予防する、脳の栄養、神経組織の発育にかかわる、アレルギー症状を改善するなどの働きがあります。以上のことからオメガ6よりもオメガ3を多く摂ることが望ましいとされています。ちなみに、オメガ3とオメガ6の理想的な比率は2対1が良いと言われています。

以上、食用油を化学的構造から大別したものをお伝えしましたが、一種類の植物、魚、動物から採れる油でも色々な異なる脂肪酸が含まれているのが普通です。
植物油は体に良いと言われてきましたが、種類や抽出方法、調理法によっては健康に悪い影響を与えます。次回から色々な食用油の特徴、調理のコツ、保存法などについてお伝えしたいと思います。

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食用油シリーズ

昨今、オメガ3や6といった飽和、不飽和脂肪酸の効用や害が話題になっています。そこでそれらを豊富に含む食用油とその関連について数回に分けてまとめてみました。
普段私たちが食事などを通し摂取している食用油の主成分は脂質です。脂質は、たんぱく質、炭水化物と共に人間の生命維持や身体活動のエネルギーに欠かすことのできない三大栄養素の一つです。そこで、食用油を取り上げる前に、栄養素について触れてみたいと思います。

第一回 栄養素 


食べ物に含まれている様々な物質のうち、人間の身体に必要不可欠な成分を栄養素といいます。中でも特に大切な炭水化物、たんぱく質、脂質を三大栄養素、ビタミンやミネラルなどを加え五大栄養素、そして微量成分、植物繊維などのファイトケミカルス(phytochemicals 植物性化学物質)を加えて六大栄養素とよんでいます。

①炭水化物
炭水化物を構成する糖質は米や小麦粉、芋などの主成分であるでんぷんや、果物に含まれる果糖、砂糖(ショ糖)などがあります。
糖質は体内で消化、分解されブドウ糖に変化します。ブドウ糖は腸から吸収され肝臓に、そして血液を通して身体の各組織に運ばれ二酸化炭素と水に分解されます。その過程で1g当たり4kcalのエネルギーを供給し、脳や筋肉が働くための重要なエネルギー源となります。
体内で過剰になったブドウ糖はグリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられ、必要に応じてグリコーゲンからブドウ糖にまた変化し、血液中に放出されエネルギー源として供給されます。しかし、体内に蓄えられるグリコーゲンの量には限界があります。糖質を摂りすぎると、肝臓や筋肉に蓄えきれなかったブドウ糖は脂肪組織に運ばれ体脂肪として蓄積されるので、肥満につながります。
炭水化物の主成分である糖質は速効性の高いエネルギー源、脳や神経系の栄養源、疲労回復効果、筋肉の運動、体温の維持、ホルモン作用、免疫反応などの生命維持のために重要な働きをしています。不足すると、血液中のブドウ糖の濃度が下がり、エネルギー不足となって疲労しやすくなり、集中力や学習能力が減り、不眠やイライラ、不安の原因となります。
尚、糖質にはご飯やパン、麺類などのでんぷん、果物に多く含まれる果糖、母乳や牛乳に含まれる乳糖、大豆オリゴ糖、ハチミツや味噌、醤油などに含まれるイソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖などがあります。

②たんぱく質
たんぱく質は骨、筋肉、皮膚、臓器、血液、毛髪、ホルモン、酵素などを構成する成分で、約20種類のアミノ酸が結合してできています。たんぱく質を摂取する際、アミノ酸のなかでも体内では生成できない必須アミノ酸が必要量(アミノ酸スコア)に達していないとよく吸収されません。そこで、肉や魚、卵といった動物性のたんぱく質と大豆などの植物性のたんぱく質をバランスよくとる必要があります。たんぱく質も摂りすぎると体外に排出される際に大量のカルシウムが必要なことから、骨粗鬆症の原因になりかねません。また通風発作、肥満、尿毒症、神経過敏症などの症状の悪化を招くこともあります。一方、摂取量が不足すると脳の働きや体力、免疫力の低下、貧血、肌荒れ、抜け毛などの原因にもなります。
必須アミノ酸には成人に必要とされる、体の組織の修復、鎮痛、催眠、精神安定、神経伝達物質・セロトニンの原料、肝臓の機能を高める、体の成長に関与するなどの働きをもつ9種類のアミノ酸が、そして、子供には体を活性化し免疫を高めるアルギニンを加えた10種類があります。

③脂質
脂質は1g当たり 9kcalと三大栄養素の中で最も高いエネルギー源であると共に、ステロイドホルモンの原料、細胞膜の生成、脂溶性ビタミンの吸収を促したり、体内で合成できない脂肪酸である必須脂肪酸を供給するなどの大切な役割をしています。脂質の主な構成成分は脂肪酸の化学構造の違いから「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に大別されます。不飽和脂肪酸は、「単価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分類され、さらに「多価不飽和脂肪酸」は「n-6系脂肪酸(リノール酸など)」と「n-3系脂肪酸(α-リノレン酸など)」に分けられます。脂質は摂り過ぎると肥満などの原因になりますが、不足すると成長が遅れたり、血管がもろくなったり、脂溶性ビタミンの吸収率の低下、湿疹、皮膚のかさつきなどの皮膚障害などの原因になります。

次回からは「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」、食用油の種類やその栄養と働きなどについてお伝えしていきたいと思います。


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第8回  第三の柱
  (Dritte Säule/le troisième pilier)



ライフスタイル研究会発行のハンドブック「新・わかるスイスの年金制度」
について、「グリエツィ」誌上をお借りしてこれまで七回にわたってその概要を
お知らせしてきました。今回はその最終回、第三の柱3a貯蓄の引き出し、3a貯蓄の銀行と保険会社の違い等をお知らせいたします。(参考までにハンドブックの本文のページ数も記載しました)


①銀行(3a口座)及び保険会社(3a証書)貯蓄の引き出し

3a口座 ∕ 証書は老後の備えを目的とした特別な貯蓄ですので、特定の理由を除いて、原則的にAHVの受給年齢(男性65才 / 女性64才)の5年前まで積み立てた貯蓄金を引き出すことはできません。

また、引き出しの際には一つの口座から全額を一度に引き出さなければなりません。二つ以上の3a口座 ∕ 証書貯蓄を持つと、60才を過ぎてからある年に一つの口座、別の年に別の口座と順々に貯蓄を引き出せる利点があります。

正規定年の5年より早くに積立金を引き出せるのは次の場合です。
・スイスを永久に離れる
・自営業を始めるに当たっての資金
・本人が住む家の購入
・企業年金の買い入れ(これまで3aにどれだけ支払ったかを考慮して買い入れ額が決まる)
・100%の障害基礎年金を受けるようになった場合
・本人が死亡した場合(受取人の優先順位がある )
(『新・わかる....』p.109)

②銀行(3a口座)と保険会社(3a証書)の違い

銀行の3a口座
・貯蓄者各々が、家計の事情などに応じてその年の貯蓄額(定められた最高額まで)を自由に決め、貯蓄することができる。もちろん、全く貯蓄できない年があっても良い。(但し、後年それを補填することはできない)
・年の初めに払い込むとその年の一年分の利子が得られる。
・銀行を変える場合は、そのつど全額を引き出し移転しなければならない。

保険会社の3a証書
・貯蓄部分を含む掛け金は必ず定期的に支払わなければならない。
・減収や失業などで掛け金が支払えなくなった場合には、損失が伴う。もう一度見る事
(『新・わかる....』p.106)

③積立金の受け取り

3a口座 ∕ 保険証書に貯蓄された積立金は、正規定年に達した時、あるいはそれより5年前から一時金か年金(保険会社の終身年金など)として受け取ることができます。この際、納税義務が出てきますが、税率は通常の所得税より低くなっています。この税率は各州また引き出す額によって異なっていますが5%から10%です。
第三の柱の貯蓄額に加えて、企業年金も一時金で引き出した場合、税負担が大きくなることもあります。節税の観点から言えば、課税率の低い州に引っ越すことも考えられます。                      (『新・わかる....』p.111)

④離婚と3a口座 ∕ 証書貯蓄

離婚の際は第三の柱の貯蓄も財産法により分割されます。

例外は、以下の場合です。

・夫婦が財産の分割を取り決めていた場合
・婚姻契約で分割の対象にならないと取り決めていた場合   
(『新・わかる....』p.110)  

3a投資ファンドや3a保険商品など、銀行や保険会社ではいろいろな3a商品を提供しています。(『新・わかる....』p.112) インターネットサイトでも第三の柱に関する情報を得ることができます。(『新・わかる....』p.114)

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これまで8回にわたりスイスの年金制度の概要をお伝えしてきました。スイスの年金制度について皆様がお知りになりたかったことなど、少しでもお役に立つことができたならば幸いに存じます。皆様のご愛読ありがとうございました。
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第7回 第三の柱
(Dritte Säule/ Troisième pilier)


今回はスイスの年金制度の三番目の柱、第三の柱についてわかりやすくまとめてお知らせします。
当会発行の「新・わかるスイスの年金制度」の本文のページ番号も記載しました。


第三の柱は銀行や保険会社などの民間会社が管理、運営する老後のための個人の貯蓄です。退職後も現役時代のような生活をある程度保ちたいと希望したり、第二の柱に加入していない人が年金の補充を目的とする場合は、この第三の柱への貯蓄が考えられます。

第三の柱への貯蓄は任意です。
個人の予算に応じて貯蓄することができます。

一般に第三の柱というときには3a貯蓄をさしますが、第三の柱には3aと 3bと二つの貯蓄形態があります。しかし、3b貯蓄は国が定める老後の資金作りという概念からはずれるため、ここでは詳しく説明しません。

第三の柱3b貯蓄は、子供から大人まで私たちが普通にしている貯蓄、いわゆる一般的な個人貯蓄(預金、有価証券投資など)や不動産投資などです。一般的に税制上の優遇策も無い代わりに、期限の決まった債券などは別として、いつでも自由に引き出すことができます。(『新・わかる....』p.105)


第三の柱3aは、ゆとりのある年金生活、老後の備えを目的とした税制上優遇された特別な個人貯蓄です。ですから、国の定めたいろいろな規定があります。

①銀行(3a口座)及び保険会社(3a証書)に貯蓄できる人

・18歳以上でスイス国内に居住するスイス人および外国人の勤労者。
・勤労所得のない人は貯蓄できません。
  (『新・わかる....』p.105)

②第三の柱3a貯蓄における税制上の優遇

・3a口座 ∕3a証書に払い込んだ額は、税金申告の際に課税所得から控除できるので、所得税が低くなります。
・固定資産税がつきません。
・資本所得税がつきません。利子には利子所得税がつきません。
・引き出しの際には、一般の所得税率より低い税率で課税されます。
(『新・わかる....』p.107)

③銀行(3a口座)及び保険会社(3a証書)に払い込める額には制限があります。

・企業年金(Pensionskasse/ Caisse de pension)に加入している被雇用者及び、企業年金に任意に加入している雇用者と自営業者は、個人の年収に関係なく一人一年に最高額Fr.6,739(BVG保険対象給与の上限8%)まで払い込むことができます。(数字2013年)
・企業年金に加入していない被雇用者(パートタイム勤労者や年収Fr,27,840 以下の人など)および自営業者は、年収の20%まで、但し最高金額Fr.33,696 まで払い込めます。(数字2013年)
・3a口座 ∕ 3a証書に前年に払い込みの最高額まで払い込めなかったからといって、その差額を後年に払い込むことはできません。
・一人の人が2つ以上の3a口座 ∕ 3a証書を持っている場合も、全ての3a口座/3a証書を合わせて年間の最高額を上回る貯蓄はできません。
・年間の最高額以上に払い込まれた金額は、税務署が貯蓄者に引き出すよう要求   できます。
・本人が住む家を3a口座 ∕ 3a証書の貯蓄を引き出して購入した場合も、その引き出した金額を後から補填することはできません。
 (『新・わかる....』p.105,p.108)


次回はスイスの年金制度最終回、3a貯蓄の引き出し、3a貯蓄の銀行と保険会社の違い等々をお知らせいたします。
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