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スイスの年金制度


今回から数回にわたり、スイスの年金制度について簡単に説明していきたいと思います。

昨年秋に日本はスイスと社会保障に関する協定に調印しました。しかし、この協定が発効されるにはまだ両国の国会での批准、承認等が必要であり、相応の時間がかかりそうです。スイスに暮らす日本人にとってスイスの社会保障制度を考える丁度良い機会かもしれません。

スイス日本ライフスタイル研究会が、2001年に『わかるスイスの年金制度』を出版してから10年が経ちました。この間年金に関する法律は数回にわたって改正され、出産育児補償や家族手当など、老後のみでなく若い人々への手当も『年金制度』の領域に入ってきました。当然のことながら数字も何度も変わっています。当会では、日本人の皆様がスイスの年金制度を理解する上で少しでもお役に立てればと、この度拙著を大幅に改訂し『新・わかるスイスの年金制度』と題してこの夏に出版する予定です。




第1回
AHV(AVS) 老齢・遺族基礎年金 

AHVとは国(正確にはスイス連邦政府社会保険庁)が運営する公的老齢・遺族年金保険で、ドイツ語のAlters und Hinterlassenenversicherungという長い名前の頭文字をとった略称です。仏語でも同様にAVSと略されて呼ばれています。日本の国民年金に相当すると考えて良いでしょう。すでに1925年にAHV法を憲法に制定しようとする動きがありましたが、実際に憲法に制定され、スイスで最初の年金が支払われたのは1948年の1月1日になってからでした。

スイスの年金を掛けてきた被保険者は、定年になると老齢基礎年金を受給できます。又、本人が亡くなった場合、遺族に寡婦(寡夫)年金または遺児年金が支払われます。被保険者が日本国籍のみを有する場合、スイスに住んでいる限り問題ありませんが、スイスを去って例えば日本に帰ると、現在のところまだスイスとの社会保障協定が発効されていないので、受給資格を失います。(但しそれまで払ってきた掛け金は利子なしで、還付されます)

加入義務
スイスに住んでいるほとんどの人に加入義務があります。働いている人はもちろん、外国人も、仕事をしていない人も加入義務があります。主婦(主夫)で仕事をしていない場合、夫(あるいは妻)が仕事をしていて最低掛け金の2倍(2011年で950フラン)を払っている場合は、加入している者とみなされます。

加入期間
•働いている場合、18才の誕生日を迎える年の1月1日より(例:1990年3月15日生まれの人は2008年1月1日より掛け金を支払う義務があります。)
•18才になっても働いていない場合は(学生など)、21才の誕生日を迎える1月1日より加入義務があります。
•終了は加入開始時期に関わらず、男性は65才、女性は64の誕生月です。


掛け金額 (以下数字は2011年対応額)

AHV /AVS老齢・遺族基礎年金
IV/AI  障害基礎年金
EO/APG所得補償保険(兵役、民間防衛役務、出産、育児補償)
ALV/ AC  失業保険

以上が一括して徴収され、月給Fr.10,500以下の被雇用者は給料から合計で6.25%が天引きされます。雇用者は被雇用者から天引きした額に雇用者の負担分を加えて(すなわち12.50%)、さらに雇用者が全額負担する管理費(0.3~0.5%)を加算して、年金局に支払う義務があります。月給Fr.126,000~315,000フランの給料域に対しては、失業保険の掛け金パーセントが低くなります。

自営業者は掛け金を全て自分で支払わなければなりません。しかし、被雇用者が雇用者と共に支払う合計額より少なく設定されています。働いていない人の掛け金額はその人の年金や資産から計算されます。

EO/APGはもともと兵役義務を務める人の所得補償保険として制定されました。2005年7月1日から、ここに新しく出産、育児時に発生する所得欠損に対する補償保険(MSE/Amat )が組み込まれました。連邦はこの保険に対する財政を補うために2011年1月1日年より掛け金を0.3%から0.5%(被雇用者と雇用者が各0.25%)に引き上げました。

次回は「AHVの受給額」について、お知らせします。

資料:インターネット(www.ahv.ch、www.admin.ch 他)、参考本:SALDO RATGEBER等