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塩について 2

2.塩の働き 

今回は毎日の料理に使われている塩の様々な働きについてお知らせします。



塩には、「脱水作用」、「浸透作用」、「防腐作用」、「蛋白質を安定させる作用」、「酵素・色素の働きを調整する作用」などの働きがあります。毎日の食生活を彩り良く豊かなものにすることが出来るのも、塩のこのような働きのお陰といって良いでしょう。


(1)脱水作用 、浸透作用

塩の水分や湿気を取り込む「脱水作用」を利用して漬物や肉、魚介類の干物などが作られます。漬物の場合は漬ける野菜の重さの3% から、場合によっては5%ほどの塩が使われます。そして、「浸透作用」が働いて塩分が組織・細胞に染込んで適度の塩味がつき、美味しく感じられます。塩は素材の味を生かす隠れた立役者といえます。

また、鯖などの青魚やブリのように脂肪の多い魚を料理する時に塩をふり冷暗所に置いておくと、生臭さ、ぬめり、脂肪分などが吸収されて味が上品になるという利点もあります。


(2)防腐作用

食材が傷むのは、含まれている水分のために微生物が繁殖しやすく、様々な酵素が働き始めてタンパンク質の分解が始まり、同時に空気に触れて酸化が起こるからです。塩をふれば脱水され、微生物の繁殖を制限し酸化や酵素の働きが抑えられるので食材を腐敗から守ります。

魚は塩をふったり、食塩水に暫くつけてから生乾きにしておき、それを冷蔵庫に入れておけば、数日は日持ちがします。最初から多量の塩を使って天日で乾燥させれば腐敗の心配もなく長期間保存できます。また食材も縮み軽くなるので保存・運搬も簡単になります。例えば「干しタラ」があげられます。新鮮なものよりも味がよいのです。ポルトガルでは新鮮なタラよりも、干しタラの方が人気があるようです。

こうして塩の脱水・防腐作用を利用して、昔から保存食品が作られてきました。日本の漬物、味噌、醤油など、またヨーロッパではチーズやビュンドナーフライシュ(牛肉の干し肉)や生ハムといった乾燥肉も塩を利用して作られています。



(4)蛋白質を安定させる作用

魚は食塩や醤油で塩味をつけてから煮ると煮崩れを防ぎます。それは塩の「蛋白質を安定させる作用」が働くからです。ステーキを例にとっても、焼く直前に塩をふると表面が安定してジューシーな焼き上がりになります。ただ、塩をふって時間が経つと、肉汁が出て出来上がりが固くなってしまうので注意が必要です。蛋白質を安定させる働きを利用して、メレンゲなどにも塩が使われます。卵白の泡が安定することにより長時間に渡り形崩れを防ぐからです。



(5) 酵素・色素を安定させる作用

お料理には味だけではなく見た目も大切です。彩り良く盛られたお惣菜にはそれだけでも食欲がそそられます。ほうれん草などの緑色野菜には、塩を一つまみ入れたお湯にくぐらすとナトリウムイオンが青菜の細胞内に浸透して色素(葉緑素)を安定させるので色が鮮やかになります。その直後に冷水にさらすと温度が下がり酵素の働きがその段階で止まるので鮮やかな色が保たれます。

私達の食生活に欠かすことの出来ない「味噌」や「醤油」なども、塩の「酵素を安定させる作用」を利用して造られます。というのも、塩の分量によって「麹菌の働き」をコントロールすることができるだけでなく、それぞれに独特の味をブレンド出来るからです。



生体維持に欠かすことの出来ない塩。次回は「塩の体内での働き」についてお知らせしたいと思います。





市販されている塩:

スイスで市販されている食用塩には3種類あります。スーパーなどで見てみると、青色の箱に緑の帯がついているのは、カリエス予防のためのフッ素と、ヨードが添加されています。青色で赤い帯のついている箱の塩にはヨードだけが添加されています。またフッ素とヨード両方とも添加されていない塩もあります。

ヨードは海藻類などにたくさん含まれていますが、スイスのような内陸国は、昔から魚介類や海藻類をあまり摂取できない国であるため、ヨードの欠乏症を防ぐために、人工的に食塩に添加しているのです。フッ素は虫歯の予防に有効なため添加されています。