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わかるスイスの年金制度

わかるスイスの年金制度

ー是非手元におきたいハンドブック(日本語解説版)-

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スイス日本ライフスタイル研究会発行(2001年6月)

『わかるスイスの年金制度』は、おかげさまで
完売となりました。ご購読された皆様ありがとうございました。



本のはじめにより

スイスの社会保障制度は、それぞれが独立しているのではなく、お互いの制度がからみ
あいながら成り立っていますから、ひとつの制度について述べるときは大変複雑になり
ます。その中でも年金システムは、どの人にとってもとても大切な基本的生活情報のは
ずですが、残念ながら、当のスイス人であっても漠然としか知らないという人が多いよ
うです。内容が複雑であるのに加え、法律が頻繁に改正されたり、給付額の変更があっ
たりするので無理もない話なのですが、言葉のハンディがある私達にとっては、難しい
テーマであることは確かです。実際、資料を読んでいるうちに、文書によって異なった
ことが書いてあったり、違った解釈をしているところにも多くぶつかりました。

そんなテーマに今回私達が取り組んだのは、スイスに暮らす日本人にも大いに関わりの
ある年金制度について、私達の理解できたものだけでもお伝えしたいと思ったからです。
年金について基本的なことだけでも理解し、どんなものがあるかをおおまかに承知した
上で、各個人の異なった状況に応じて、更に詳しいことを調べられる助けになる本にな
れば、と思いました。

『スイス日本ライフスタイル研究会』は、スイスに住む日本人に少しでも暮らしに役立
つ情報を提供してゆこうという主旨の元に活動しています。1999年、スイスの暮らしを
みつめるエッセイ集『スイスからのメッセージ』を出版してから、研究会として本格的
にスタートしました。

スイスの人口の五分の一は外国人で占められています。国は外国人に対する社会保障制
度を度外視できないのです。そして今回私達の研究した年金に関する限り、スイスとい
う国はスイス人も外国人もほとんど平等に取り扱っています。スイスに住む限り誰でも
最低限の生活が保障されています。同時に、国は外国人に対しても同じ義務を課してい
るのです。スイスで仕事をなさっている方は、給料から義務として天引きされている
AHV(仏語ではAVS)とか、Pensionskasse(la caisse des pensions)とかが何を意味
するかご存知でしょうか。

このハンドブックをお読みになって、定年後の保障の中身を少しでもご理解いただけれ
ば幸いです。そして、ご自分の情報と違っていることがあれば、最寄の市役所、年金事
務所などに直接お問い合わせなさることをお勧めいたします。この本が年金制度につい
ての疑問点解決のきっかけとなれば、それが今回の出版における私達の意するところで
あります。

年金について勉強している間、様々な疑問が生じ、地方の年金事務所や連邦社会保険庁
などに何度も問い合わせることになりました。いろいろご親切なご回答をいただきまし
た関係当局の皆様に、この場を借りて深くお礼を申し上げます。

最後に広告掲載という形で、このハンドブック出版を援助して下さった各会社や個人の
方々に深く感謝いたします。
                  
    2001年6月

スイス日本ライフスタイル研究会

年金プロジェクトチーム
(アルファベット順)

Ahr kumiko アール 久美子
Brunner Toshimi ブルンネル 淑美
Drenhaus Nobuko ドレンハウス 信子
Durrer Miwa デューラー 美和
Ganarin Yumiko ガナリン 裕見子
Nussio Michiko ヌッシオ 道子
Zumstein Mieko ツムシュタイン みゑこ

表と本文レイアウト: Drenhaus Nobuko


あとがき

スイスにおいても日本と同様、高齢少子化が進んでいます。この人口構造の変化に
伴って、将来の行方が心配されているのがAHV/AVSです。1948年に導入されたこの
年金保険は、現役で働いている人達の掛け金をそのまま年金受給者の年金にあて
るという財政システムを取っています。2010年まではなんとか財政が安定している
ようですが、その後は掛け金収入を補足する財源を捜さなければならないようです。

今、AHVの第11回改正法案が話題になっています。将来の年金財政の安定のため節約し
たい側と、保障の枠を広げたい側との間で論議が盛んです。女性にとっては定年年齢の
引き上げや寡婦年金の一部カットなど、不利な法案も出ています。しかし、掛け金の収
入は減少していき、年金支給は増え続けるのですから、何か対策を考えなければ、この
年金システムの将来は難しいといえるでしょう。

企業年金の方はどうでしょうか。これまで、企業年金基金にはお金があるといわれてい
ました。長期に亘るスイスの経済成長と株式市場の盛況で、資金運営がうまくいったた
めです。(資金の最高30%までの株式投資が認められています。)しかし、昨年からの
株式市場の低迷で、年金基金はこれまでの利益の多くを失ったとも報道されています。

誰でもある年齢に達したなら、ふと老後のことを考えるようになるでしょう。私達の会
のメンバーも老後を考える世代になりました。『時がくれば自然に年金をもらえるのだ
わ』と受身に構えていたのですが、勉強した後の皆の印象は、『年金は期待しているほ
どもらえないのでは』ということです。日本人の場合、特に掛け金支払い年数に空白期
間があることが不利になっています。又、企業年金に加入されていない方もおられるで
しょう。

AHVの将来に不安があるなら、老後の備えは各自である程度考えなければならなくなり
ます。そして定年直前になって考え始めるのでは遅いということもわかっています。
『備えあれば憂いなし』のことわざ通りです。

このハンドブックが、皆様の老後設計に少しでもお役に立つことがあれば、私達にとっ
てこれほど嬉しいことはありません。
私達で調べられる限りの努力をいたしましたが、記されている内容に間違いがあった場
合には、どうぞお許し願います。

また、年金に関してもっとご存知のことがありましたら、是非アドバイスをいただけれ
ば幸いに存じます。

    年金企画責任者  ガナリン裕見子