第三回 スーパーフード(1)

先回の老化のメカニズムで、活性酸素が老化に影響していることを学びました。今回は活性酸素の毒素を消す抗酸化物質を大量に含むと言われているスーパーフードについて調べてみます。

スーパーフードと聞くと、いかにも流行り言葉のように聞こえますが、『スーパー』という表現からも、普通の食品とは少し違うことが想像できます。言葉の由来は、1980年代頃から健康的な食事療法を研究していたアメリカやカナダの研究者の間で出てきた言葉です。その後アメリカ人医師プラットの著書『スーパーフード:あなたの人生を変える14の食品』によって、特にベジタリアンやビーガン(完全菜食主義者:乳製品、卵、蜂蜜などを含む動物由来の食品を一切摂らず、また革製品などの動物利用も一切避けるという生き方をする人々)を通して世界中に知られるようになりました。

スーパーフードの定義は次の通りです。


1. 植物性の食品で栄養価が非常に高い

2. ある有効成分が飛び抜けて高い

3. ごく少量でも栄養・健康成分が含まれている


さらにそれらの食品は、「天然の抗酸化物質を多量に含み、糖尿病や循環器系疾患などの生活習慣病や老化の予防になり、ガンのリスクを低くする」など、アンチエイジングの効果もあることから、益々人気を博するようになりました。まだ研究されている段階ですが、アルツハイマーに対しても効果を発揮すると期待されています。

今やスーパーフードは、朝食やスムージー、飲料、スナック、デザート、そして一般の料理の食材に幅広く利用されています。


具体的にスーパーフードとはどのような食品かというと、ベリー類(ブルーベリー、アサイベリー、アロニアの実など)、ナッツ類、種子(チアシード、ハンフ、ラインザーメンなど)、緑色野菜、バジル、コリアンダーなどの新鮮な薬草、キノアやアマランスなどの健康的な穀物を指します。

一般にスーパーフードとして賞賛されている食品の中には、アマゾンの山奥で取れるアサイベリーや、ペルーのアンデスの山奥で取れるマカなど、あまり耳にしたことがないエキゾチックなものもあります。それらは原住民が太古の昔から食していたもので、健康に優れ高いエネルギー源があると実証されている食べ物です。しかし新鮮な状態で手に入れることは難しく、フリーズドライでのみ手に入るものもあります。最近流行りの食品として値段も高い食品もあります。しかしそれらの見慣れない食品を無理に求めなくても、ヨーロッパや日本で昔から食されてきた食品にも同じような効果のある食品があります。自分の嗜好に合った、簡単に手に入って料理に組み入れられる食品などを選んで利用しましょう。


入手しやすく、かつ典型的なスーパーフードには以下のような食品があります。

1. ラインザーメン (フラックスシード、亜麻の種子)

オメガ3脂肪酸、食物繊維、リグナン(ポリフェノールの一種で抗酸化力が強く、植物性エストロゲンとしての効果がある)、たんぱく質が豊富で、コレステロール値を下げたり、ガンや心疾患の予防になるなど、ヨーロッパでは昔から重宝されているメディカルフードです。(ラインザーメンは熱に弱いため生で食べる)ラインザーメン油は当会の油のシリーズでも説明しましたが、α—リノレン酸が豊富で脳の活性に良いと言われています。ラインザーメンと同じく加熱せずに使用します。


2. ブルーベリー(Blueberry、ドイツ語ではHeidelbeereとも呼ばれる)は果物の中でも最も健康に役立つと言われ、あらゆる成分を含んでいます。とりわけ青色の色素であるアントシアニンには強い抗酸化作用があり、細胞を有害物質から守ります。アントシアニンとビタミンE、マンガンなどによって生活習慣病の予防やアンチエイジング効果を発揮します。また視覚機能改善作用や眼精疲労改善作用があることで知られています。アントシアニンはまた、骨粗鬆症の予防に効果があります。その他にもビタミンACKなどを含み、まさにスーパーフードと言われる所以です。


3. 海藻

日本人にとっては昔から馴染みの深い食品です。タンパク質やクロロフィル(葉緑素)、植物では海藻にだけある細胞の新陳代謝に不可欠なビタミンB12、(9種類の)必須アミノ酸、主要なビタミン、マグネシウムやカルシウムなどのミネラル類が豊富です。加えてオメガ3脂肪酸やヨードを含み、食物繊維も豊富と良いことづくめです。


4. アボカド

南アメリカ産のアボカドは今や人気の食品です。バターのようにこってりした脂肪は不飽和脂肪酸で、体内の悪玉コレストロールを低下させる働きがあり、心臓や血管の健康維持に役立ちます。そしてこの脂肪は他の食品の脂肪に溶解している栄養素を体内に取り入れやすくするため、サラダやスムージーに少し入れるだけで食事をさらに健康にします。またアボカドは「食べる美容液」と呼ばれるほど美肌効果があると言われています。肌の潤いを保つ脂肪はもとより、皮膚の再生に必要な必須アミノ酸、美白効果のあるビタミンCE肌荒れや老化防止に役立つコエンザイム(補酵素)Q10を含んでいます。その他ビタミンAカリウム、カルシウム、鉄、燐などのミネラル類を含み、食物繊維も豊富です。さらにはカロテノイドの一種であるルテインを含み、加齢に伴う目の病気(白内障など)から守ります。ビタミンB類の含有量は果物の中でもっとも高く、アボカドはアンチエイジングの効果抜群です。

次回は引き続き『スーパーフード』をご紹介します。




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# by sjlifestyle | 2017-03-11 05:40


第二回 老化のメカニズム


 老化とは、「生」から「死」へのプロセスに伴い生じる生理機能の低下のことをいいます。そのプロセスの進行には遺伝子、水や空気などの住環境、食生活や生活環境、また、生活パターンや個人差も影響していると考えられています。これまでの学説や研究結果によれば、そのいずれにも活性酸素が関わっている可能性があるということが判ってきました。

 活性酸素は、呼吸を通した代謝の副産物として体内に自然に発生します。またストレス、喫煙、激しい運動、大気汚染、紫外線や放射線などの外的要因によっても発生します。活性酸素は体内に侵入した異物や細菌類を駆除するという働きがあり、私たちの体にとって有益かつ必要なものです。しかし体内に必要以上の活性酸素が発生すると、体全体の細胞にダメージを与えるようになります。普通は体内で合成される抗酸化酵素により、余分な活性酸素は無害な物質へと分解されます。また抗酸化物質を含む食品(最近注目されているスーパーフード等)を取ることでも中性化されます。誰にでも加齢とともに、抵抗力の減退、体力や気力の衰え、視力の低下、皺やシミの発生、白髪になる、記憶力の低下などの老化現象が現れます。しかし体内の浄化作用を上回る活性酸素が長期間に亘って発生し続けると、老化のプロセスが早まり、成人病や生活習慣病などが顕著となり、老人病や認知症にかかりやすくなります。

 では老化を止めることは出来るのでしょうか?

 老化は自然の摂理であり、それを止めることはできません。しかし老化のプロセスを遅らせることは可能です。

 例えば、ジョギングなどの多量の活性酸素が発生する激しい運動の代わりに、速足のウォーキングや散歩、ハイキングのような軽い運動、あるいはヨガのようなゆったりとしたポーズやストレッチをすることがお勧めです。これらの運動は自律神経やホルモンのバランスを正常化させ、免疫機能を活発にし、血行やリンパの流れの改善を図り、老化現象にブレーキをかけることができます。その際に太陽光を浴びることは、体内でビタミンDが合成されるうえに幸福ホルモンであるセレトニンが分泌され気分や気持ちが良くなることから、心のケアにも繋がり一石二鳥といえます。ただし、紫外線は肌の老化現象の主な原因となるため、UV-カットの手当をすることも大切です。

 現代社会はストレスに満ち溢れています。職場だけでなく私生活においても、仕事や人間関係のストレスに晒されています。便利なはずのインターネットなどの情報交換技術は即対応しなければならず、それもストレスの原因になります。その結果、昨今「バーンアウト症候群」や「鬱」等のストレスからくる心の病が増えてきています。

 過度のストレスは老化現象を早めます。そういったストレスの解消策として、休暇をとってのんびりしたり、好きなことをして心身をリラックスさせるなど、日常生活からの一時的な解放が挙げられます。その解消法は人さまざまですが、各自ができる範囲で「自分だけの時間や家族との時間」を持ち、体や心を大切にして楽しみながら生活することがストレスを乗り切る方法と言えます。

 「老化」からは誰も逃げることができません。しかし「美しく歳をとる」ことは努力次第とも言えそうです。心身ともに年齢にあった豊かな生活をし、「生きがい・やりがい」を見出して、生き生きとした日常生活を創造することがアンチエイジングに繋がると言えましょう。


次回は老化予防にも効果がありそうなスーパーフードについてまとめます


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第一回 アンチエイジングの意味と歴史


全ての生命体は「誕生」と同時に「老化」への道を歩み始めます。そして自然の摂理である老化のプロセスを止めることはできません。「いつまでも若くいたい」と願うのは洋の東西を問わず、あるいは男女を問わず、多くの人にとって当然のことでしょう。今回から数回に分けて老化現象とアンチエイジングについてお知らせしていきます。きっとお役に立つ部分が見つかることと思います。

アンチエイジングの意味

エイジングとは年齢を重ねることですが、それに抵抗(アンチ)するという意味合いでアンチエイジングという言葉が生まれました。美容や健康の面で注目され始めた概念で、老化の原因の抑制、心身機能の衰えを予防・改善することを意味しています。

アンチエイジングの歴史

 歴史を遡れば、絶世の美貌を誇りその美貌を保つ為に、当時の富と権力を駆使して様々な健康法を追求し実践していた、何人かの歴史上の女性たちの存在に気づかされます。その健康法や美容法は果たしてどんなものだったのでしょうか。

 クレオパトラ(紀元前69‐30)は、真珠を酢に溶かして飲用し、蜂蜜やアロエを日常的に使い、ロバのミルク風呂や死海の塩を入れたお風呂に入っていたという記録があります。寝室にはバラの花を敷き詰め、バラの香料や香油をふんだんに使っていたそうです。

 楊貴妃(719‐756)は玄宗皇帝に「ライチ」や「氷」を遥か遠方から長安まで取り寄せさせたことで知られています。薬膳に力をいれ、古くから「生命と健康の穀物」と呼ばれて重宝されてきた「ハト麦」等を欠かさなかったと伝えられています。また、白キクラゲ、とろけるほど柔らかく煮た鶏肉、燕の巣を常食としていました。

 一方、夫の皇帝と息子の代わりに男勝りの政治をしたことで有名な西太后(1835‐1902)は、若さを保つ為に好物の「クルミ汁」、ロバのニカワ「アキョウ」(別名、和漢コラーゲン)、「豚の丸焼きの皮」の他、日々の食事には100種の料理を作らせていたということです。肌にトラブルが多かったことから「永遠の若さ」を追求し続け、「玉溶散」という雀の尿と雄の鷹と雄の鳩の糞で作られた化粧品を愛用し、宝石でできた「美顔ローラー」を使用していたそうです。この「玉溶散」の成分は「鶯の糞」にもあり、日本では江戸時代頃からを美顔術の一つとして芸者や歌舞伎役者の間で使われていたと言われています。

 その西太后と同じ時代に生きたオーストリア・ハンガリー帝国の皇后エリザベート(1837- 1889 )は、当時のヨーロッパで最も美しい女性として知られていました。子牛の生肉から絞り出したエキスを飲用したり、薄切りの生肉でパックをするなど独特の美容法を実践していたそうです。しかし前述の3名の食事と比較すると、エリザベートの食事はオレンジジュース、ミルク、ブイヨン、塩で味付けした卵白等でダイエットに近いものだったようです。

 平安時代の女流歌人として名の知れた小野小町(825-900)は山芋入りの麦粥、蜂蜜、鰻や鯉料理を好んで食したそうです。「温泉」が好きで、入浴後はへちま水を化粧水として使い、米ぬかや小豆粉をクリーム状にして肌に塗布していたと言われています。


 「美貌を保ちたい」「健康でいたい」という一念から始められた健康法・アンチエイジングは古の時代から今に続き、その多くが現在エステなどの施術や食膳としてより一般化しています。
 このように、かつては王族・貴族などの特権階級だけに可能であったアンチエイジングですが、現在では社会全体が豊かになってきたこともあり、一般の人たちにも手が届くものとなりました。また社会全体が高齢化社会になってきたことも一因です。同時に医学やライフサイエンスの進歩により老化についての研究が進み、新しい知識が一般の人にも手に入り、努力すれば誰にでも効果が出る時代になりました。

次回は「老化現象」のメカニズムについてお知らせします。
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第七回 和食の薬味 Ⅱ


前回に引き続き、和食に欠かせない薬味の効能についてお知らせします。薬味は脇役的な存在ですが、私たちの健康にとても貢献しています。

薬味の効能

大根おろし
大根はビタミンCの含有量が高く、皮に近い部分ほど多く含まれています。ビタミンCには肌の状態を整えたり、肌のメラニン色素の生成を抑えたりする働きがあります。消化酵素ジアスターゼも多量に含まれているので、胃もたれや胸焼け、二日酔いに効果があります。また大根は食物繊維が豊富なので、腸内の老廃物を排出する効能があります。
大根はすりおろすと「イソチオシアネート」と呼ばれる成分が生成されます。これが大根おろしの辛味の主成分です。ワサビの辛味などと同じタイプの成分で、殺菌作用があり、免疫力を高めたり、ガン細胞を抑制したり、消化を促す効能があると言われています。ビタミンCや消化酵素ジアスターゼは熱に弱いので、大根おろしとして生で食べることにより、栄養素を壊さずに体内に取り入れることができます。皮を薄く剥いて直前にすりおろして食べるのが理想的です。

わさび
わさびには本わさび(日本原産わさび)と西洋わさび(ホースラッデッシュ)の2種類があります。本わさびは日本の山間清流に自生、あるいは冷涼な場所で栽培されます。西洋わさびはフィンランドや東ヨーロッパが原産地ですが、北海道のような涼しい地域で、昔海外からもたらされた西洋わさびが自生して山わさびと呼ばれています。本わさびは寿司や刺身に欠かすことのできない薬味として、また西洋わさび(ホースラディッシュ)はローストビーフなどの西洋の肉料理に添えられます。鼻にツーンと抜けるような辛味の成分は「アリルイソチオシアネート」という成分で、強い防腐作用や、食中毒を引き起こすO-157、腸炎ビブリオ菌、黄色ブドウ球菌などの増殖を抑える抗菌作用があります。また、ガン予防効果や血栓予防効果も知られています。さらに香味成分の効果で食欲を高め、消化を助けるという役割もあります。
生の本わさびの根茎に含まれるワサビスルフィニルという成分は、非常に強い抗酸化力があり、生活習慣病、老化防止、発ガン抑制作用があるとされています。西洋わさびにはワサビスルフィニルの成分はほとんど含まれていません。
私たちが普段利用している缶入り粉わさびやチューブ入り練りわさびは、緑色に着色された西洋わさびの粉末が使われていることが多いので、買うときには原材料の表示を確かめてください。

ごま(胡麻)
ごまには黒ごま、白ごま、金ごまなどの種類があります。栄養的にはどれもほぼ同じで、タンパク質、各種ビタミン、食物繊維が豊富に含まれています。またカルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルも豊富で骨粗しょう症の予防、貧血の改善に効果があります。さらに活性酸素の生成を抑え、肝臓機能を強化して細胞の老化やガン化を抑制する働きもあり、昔から不老長寿の食物として愛用されてきました。ごまに含まれる脂質にはリノール酸やオレイン酸といった血中コレステロールを下げる働きがある不飽和脂肪酸も含まれています。ただし成分の半分は脂質という性質上、美肌効果はあるものの、摂りすぎには気をつけましょう。ごまは硬い殻に覆われているため、そのまま摂取するとせっかくの栄養成分が吸収されずに排泄されてしまいます。すりつぶすなどして摂取されやすい形で食べるのが効果的です。
料理ではすりごまを使ったごま和えやふりかけ、ごま油として摂取できます。

ゆず(柚子)
ゆずの皮は乾燥させて七味唐辛子に加えられるなど、香辛料・薬味として知られています。生で薄切り又は千切りにしたものを、香りとして膾(なます)やサラダに散らしたりします。ゆずにはビタミンC、カルシウム、カリウム、鉄分、ミネラルなど豊富な栄養成分が含まれています。果実よりも皮の部分により多くの栄養が含まれ、ビタミンCはレモンの1.5倍、コラーゲンを生成する働きもあります。香りの精油部分には神経をリラックスさせる働きがあります。ゆず風呂など覚えていらっしゃるでしょうか。
生のゆずはスイスでは手に入りにくいですが、ゆずの加工品(ゆず酢、ゆず醤油、ゆずドレッシング、ゆずジュース、ゆずシロップなど)を利用することができます。

青ジソ
青ジソは古くから薬効があるとして重宝されてきた薬味で、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ミネラルなども豊富です。青ジソは鮮やかな緑色と爽やかな香りが食欲を増進させ、殺菌力と防腐作用もあるため、刺身などの生ものによく添えられます。細かく刻めばより殺菌効果が高まります。貧血予防、精神安定、ガンの予防にも効果があります。またシソには美肌効果もあると言われています。
シソはスイスで簡単には手に入りませんが、日本から種を取り寄せたりして、バルコニーのプランターで育てたり、庭に撒いて育てることもできます。シソは1年草です。

海苔
海苔は海藻を原料としているので、カルシウムやミネラルや食物繊維が豊富です。そのほかにも、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB、タンパク質などがバランスよく含まれている優れた健康食品です。海苔の食物繊維には整腸作用があり、糖尿病や大腸ガンの予防にも効果的です。海苔のビタミンB1、B2は疲労回復に効果があり、鉄分は貧血予防、カルシウムは骨粗しょう症を防ぎます。さらに血液・血管の健康維持に重要なEPA(エイコサペンタエン酸)が豊富です。海苔に含まれる成分タウリンは中性脂肪を減少させるなど生活習慣病の予防にも効果があります。海苔2枚で子供の1日のビタミン必要量をカバーすると言われています。これほどの栄養素がある海苔は、是非和食の食卓に取り入れたいものです。

次回は『アンチ・エイジング』をテーマに取り上げる予定です。
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第六回 和食の薬味 Ⅰ

これまで香辛料をテーマとして胡椒とショウガについて詳しくお伝えしてきました。香辛料は海外からもたらされましたが、日本では昔、生薬として漢方薬の材料として使われたほかは、一般的にはあまり使われませんでした。それは江戸時代ごろの日本人は肉食ではなかったことと、発酵調味料を使用していたため香辛料の需要が少なかったことにあります。
今回は香辛料の枠を広げ、江戸時代頃から登場した日本独特の薬味についてお知らせします。
刺身に付くおろしわさび、冷奴やそばについてくる刻みネギ、天ぷらに欠かせない大根おろしなど、和食の食卓に薬味はつきものです。薬味がなくて何か物足りないと感じた経験はないでしょうか?

薬味が使われ始めたのは江戸時代頃から

江戸時代の初めにはうどんが日本人の好物となったようで、そのうどんに薬味が使われるようになりました。ただし今のように長ネギや七味唐辛子ではなく、当時の薬味は胡椒や梅干し、大根、味噌、醤油と記録されています。醤油は江戸時代前期に現在の千葉県の野田や銚子で作られ江戸へともたらされ、大都市江戸から全国へ広まりました。現在では味噌や醤油は調味料に分類されていますが、初めは薬味だったわけです。では当時のうどんの調味料はなんであったかというと、鰹の煮汁いわゆる「だし」でした。また当時そばの薬味にはすでにわさびが使用され、江戸時代から出てきた寿司にも風味と鮮度を保つためにわさびが使われていました。

薬味の役割・料理との関係

薬味は加薬とも言い、日本料理に用いる香味料です。出来上がった料理に添えて香りや風味を増し、彩を加え、食欲増進に役立ちます。またその香りと成分が肉や魚などの臭みを抑制し、味をまろやかにします。「薬味」という表現からも「薬膳」と同様に、体を温める、消化を促すなどの健康増進の薬効も大事な要素になります。殺菌作用のある薬味は食材の腐敗を防ぎ食中毒を予防します。また薬味と食材の相乗効果で栄養が吸収されやすくなります。
前述したように、焼き魚に大根おろしなど、料理と薬味の組み合わせというのがあります。それは食材と薬味の持つ薬効を理解した先人の知恵から、最適な組み合わせが代々伝えられてきたからです。
また薬味の調理はいずれも食事の直前に準備する必要があります。おろしたり擦ったり、刻んだりした薬味は時間が経つにつれ香りが薄れ、有効成分が揮発してしまうためです。例えば大根おろしは、おろした後15分ぐらいで食べないと有効成分の効果がなくなってしまいます。

薬味の種類

薬味の食材には植物性の野菜と果物の生鮮品と乾燥品、動物性のものは鰹節、桜エビなど乾燥水産品などがあります。また海藻のノリも薬味の一つです。
1.野菜類:主に葉や茎の部分を使い、大抵は生のまま水洗いしたものをそのまま刻んで使います。野菜類の薬味は緑色の鮮やかなものが多く彩りを添えるにも一役買っています。主なものは、長ネギ、玉シソ(青ジソ)、三つ葉、みょうが、ニラなど。
2.柑橘類:柑橘類の果実と果汁は爽やかな芳香が特徴で、料理に風味をプラスしてくれます。主なものは柚子、レモン、ライム、かぼす、スダチなど。
3.根菜類:生のまますりおろしたり、刻んだりして使います。しょうが、わさび、大根、玉ねぎ、ニンニク、ホースラディッシュなど。しょうがやわさび、ニンニクなどは乾燥させて香辛料としても使われます。
4.種子類:乾燥させた状態で使いますが、脂質を多く含むため多く使うとしつこくなります。ゴマ、ピーナッツ、クルミ、松の実など。
5.海藻類:乾燥させて切ったり揉んだりして使います。海苔、青海苔など。
6.動物性のもの:削りぶし、桜エビ、チリメンジャコなど。

薬味の効能:スイスで手に入る食材を使った薬味

長葱(ネギ)
長ネギには、食欲増進、血行を良くし疲労物質である乳酸を分解、新陳代謝を活発にする作用があります。強力な殺菌作用もあり、風邪の予防・治療に役だち、また咳を鎮めます。解毒作用、発汗作用、抵抗力アップ、不眠改善の効果などもあります。
種類は関東で多く食される白ネギと関西で多く使われる青ネギがあります。栄養的には、太陽の光をたくさん浴びて育った青ネギの方が白ネギより栄養成分が多く含まれています。特にビタミン、ミネラルについての差は大きく、ビタミンCは約4倍、ビタミンAは100倍以上になります。
しかし、白ネギに含まれているピリッとした刺激臭は硫化アリルという物質で、硫化アリルの一つアリシンは食欲を増進したり、消化器系の働きを高めたり、血行を良くするという効果があります。硫化アリルは、玉ねぎやニンニクなどにも同様に含まれています。

次回は、スイスでも手に入る和食に合う薬味をさらにいくつか取り上げたいと思います。
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